TOPIX算出ルールの見直しについて

2021年2月25日

開示・教育支援事業部
教育支援事業部担当 兼 ディスクロージャー調査研究部
執行役員 部長

高橋 義明

1.はじめに

2020年12月25日、株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)は、TOPIX(東証株価指数)の算出ルールを見直すと発表しました。見直しは東証市場区分の見直しに対応して行われるものです。
現在、TOPIXを構成する銘柄は東証市場第一部上場銘柄でありますが、後述するように流通株式時価総額100億円未満の銘柄については段階的にウエイトを低減し、最終的には指数の構成から除外されることになります。
新聞記事によると除外される銘柄数は600社程度ではないかといわれていますが、指数の構成から除外される銘柄にとって、その影響は少なくないのではないかと筆者は考えています。具体的には、当該銘柄はTOPIXをベンチマークとするパッシブ運用の対象から除外され、株主構成で投資信託等の所有割合が減少し、その結果、流通株式数も減少する可能性があります。東証市場区分の見直しでは、現状の東証一部上場銘柄がプライム市場への移行を選択する場合、流通株式時価総額が100億円未満でも上場維持基準の適合に向けた計画書を提出すれば、緩和された上場維持基準(経過措置)を適用できますが、流通株式数が現状よりも減少すれば、適合に向けたハードルが一段と高くなると予想されるためです。
従いまして、流通株式時価総額100億円未満の東証市場第一部銘柄にとって、東証市場区分の見直しに伴う市場の選択に際してTOPIX算出ルールの見直しも併せて考慮する必要がありますことから、今回はこのテーマをナレッジに取り上げます。

2.TOPIX算出ルール見直しの概要

(1)既存の構成銘柄の取扱い
現在TOPIXは東証市場第一部銘柄で構成されていますが、2022年4月1日の構成銘柄について新市場区分施行後の2022年4月4日以降も選択市場にかかわらず継続採用されます。
ただし、流通株式時価総額100億円未満の銘柄について、「段階的ウエイト低減銘柄」とし、2022年10月末日から、四半期ごと10段階で構成比率を逓減(最終的にはウエイトゼロ)します。

(2)TOPIXへの追加(2022年4月4日以降)
プライム市場に新規上場又は他の市場区分からの変更により銘柄は追加されます。また、またTOPIX構成銘柄を旧会社とするテクニカル上場銘柄も追加されます。

(3)TOPIXからの除外(2022年4月4日以降)
TOPIX構成銘柄が整理銘柄指定、上場廃止、特設注意市場銘柄への指定となった場合、TOPIXから除外されます。

(4)構成比率上限の導入
1銘柄の構成比率の上限が10%となります。

3.段階的ウエイト低減銘柄の判定・再評価

(1)第1回判定(2021年7月)
東証が流通株式時価総額100億円以上か否かを確認します(2021年6月30日を基準とする「上場維持基準への適合通知」の値を使用)。

(2)第2回判定(2022年10月)
第1回判定で流通株式時価総額100億円未満の銘柄について翌期の改善状況を確認します。
流通株式時価総額100億円未満であった場合「段階的ウエイト低減銘柄」として指定し、2022年10月以降、10段階に分けてTOPIX組入比率の低減を開始します。

(3)再評価(2023年10月)
段階的ウエイト低減銘柄について、①第2回判定の翌期の流通株式時価総額が100億円以上か及び②年間売買代金回転率0.2回転以上かについて確認し、①と②を満たす銘柄は組入比率を逓減前に回復します。
①のみ満たす銘柄は組入比率逓減を停止します。
①を満たさない銘柄は逓減を継続します。

4.浮動株比率算定方法の変更

新たに「政策保有株」を固定株として認定します。このため、政策保有株として保有される会社の浮動株比率は減少します。
この算出方法の変更に伴う売買インパクトを軽減することを目的に、浮動株比率の見直しは2022年4月末から6月末での3か月で段階的に移行します。

5.おわりに

以上、TOPIX算出ルールの見直しについて概説しました。新しいTOPIXは東証の新市場区分とは切り離されて算出されることになりますが、この見直しによって、自社が影響を受けるかについては慎重に判断し、対応を考える必要があると思います。
なお、TOPIX算出ルールの見直しについて東証は、現在、市場関係者の意見徴取中であり、本年3月末頃に予定される新算出ルールの決定されることになりますが、本稿は2020年12月25日の東証発表資料をもとに解説しておりますので、実際に決定した内容について、改めてご確認する必要がある旨、申し添えます。

以 上

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