「IRの効果測定とは?」PART1

2016年7月25日

執行役員 IR事業部長

伊藤 直司

IRの効果測定は難しい?

仕事柄、企業のIR担当者の方々といろいろな話題で議論をします。その際に必ず出てくるのがタイトルにあげた「IRの効果測定はどのようにしているのか?」というテーマです。
IRの主役たる経営者にとって、多忙な中を少なからぬ時間をかけて行っているこの活動がどのような効果が出ているのか知りたいでしょうし、IR担当者としても報告する必要があるのと同時に、自分も行っている活動がはたしてどれほど効果があがっているのかは気になるところでしょう。

実は私は前職のHOYAにいた頃は、持論として「その問いには答えがないのでは?IRとは短期的な効果を狙って実施するものではないし、長期的に考えなくてはならないプロジェクトであって一朝一夕に変化が目に見えるものではないから。」というようなことを言っていました。
それは今でも間違っていないと思っているのですが、プロネクサスに入社しIRのアドバイザーとなってからは、何らかの答えを求めてきた方々に対して、経験者として回答をさせていただき、その方のIR活動に対するモチベーションが上がるようにしてあげなくてはならないと考えるようになりました。
そこで今回も、この観点で話を進めていきたいと思います。

まずはIR活動の目的を整理してみよう

ある活動の効果を考えるということは、その活動が目指すものがあって、その目的に対してどう進捗しているかを測るということですね。例えば「ダイエットの効果測定」といえば、「やせる」という明確な目的があるわけです。その効果測定はまさに体重計に乗ることであり、気になる部分の寸法を測ることでしょう。目的が明確だから効果測定も明確になります。
というわけで、まずはこのIRという活動の目的を明確にすることから始めてみましょう。そしてその目的を達成するにはどうしたらいいかを考えていくと、効果測定のイメージが浮かんでくるのでは?と思っています。
日本IR協議会が、企業のIR担当者にIR活動の目的は何なのかを聞いてみた調査結果があります(2015年)。それによると、ほぼ次の6点にまとめられます。

  • 1. 株主・投資家との信頼関係の構築
  • 2. 会社を良く知ってもらう
  • 3. 株価を上げる(適正株価の形成)
  • 4. 長期保有の株主数を増やす
  • 5. 株主・投資家の意見を経営に反映する
  • 6. 企業価値、ブランド価値、イメージの向上

いずれも大事な目的だと思われます。IR担当者が日々の活動の中で大切にしている点が良くわかります。

株主・投資家との信頼関係の構築

それではトップに挙がった「株主・投資家との信頼関係の構築」という目的について考えてみましょう。この目的達成のために企業は何をすべきなのか、そこから探っていこうと思います。
私の経験から考えて、この目的達成のためにIR担当者が留意すべき点は以下のようなことでしょう。

  • 公平であること
  • 正直であること(ウソをつかないこと)
  • 情報を隠さないこと
  • 迅速に伝えること
  • トップに伝える(フィードバックする)こと
  • 詳細な情報を伝えること
  • 継続すること

ここで大事なことは、これらの留意すべき点のすべてにおいて、株主・投資家との双方向の(インタラクティブな)意見交換、すなわち「対話」がベースになっている、ということです。会社からの一方通行の情報伝達ではなく、建設的な対話からコミュニケーションが生まれ、良好なコミュニケーションから信頼関係が生まれるのだと言えるでしょう。

他の目的についても、結局は行き着くところは・・・

ここで私はこう考えました。先ほど、IR活動の目的を6つ列挙しましたが、そのいずれもが、「株主・投資家との信頼関係を構築する」という目的がベースになっているのではないかと。というのは、どの目的をとってみても、活動の対象(相手方)である株主・投資家との良好なコミュニケーションが出来ていなければ、その活動の効果はおぼつかないのではないかと思うからです。
例えば、「会社をよく知ってもらう」という目的についてみてみましょう。株主・投資家との信頼関係が構築できず、コミュニケーションができないようであれば、会社をよく知ってもらうことなどできようはずがありません。逆に、彼らと良好なコミュニケーションが取れて信頼関係を築けているのなら、それはすなわち、会社をよく理解してもらえている、と言えるのではないでしょうか。
このように、どの目的達成のためにも必要なことは株主・投資家との信頼関係であり、IRとは、担当者の高いコミュニケーション能力と好ましいキャラクターを活かして彼らと良好な関係を築くところから始まるのではないでしょうか。ITが発達し、インタ-ネットやWebsiteがいかに拡大充実しようとも、それを利活用するのは人間であり、人間と人間とのコミュニケーションが大事だからです。

私自身、HOYAで1995年に総務部に配属されIRを開始し2013年に同社を辞めるまでの18年間、活動の目的として一番重視したのは株主・投資家とのコミュニケーション強化でした。絶えず信頼関係の構築を第一と考えていました。
IR担当者としての私の活動方針は当然、会社としての情報開示の基本姿勢と同じものであり、そのポリシーは4つのキーワードであらわされていました。
今回はこの辺にさせていただき、次回そのキーワードについて少し詳しくお話させていただければと思います。
(次回PART2に続く)

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