2017年7月28日
執行役員 IR事業部長
伊藤 直司
7月10日、11日、酷暑の関西を回ってきて、第4回「IRグッドビジュアル賞」の個別フィードバックが無事終了しました。この機会に「IRグッドビジュアル賞」について紹介したいと思います。
本賞の主旨
日頃よりお得意先の各社は、IR活動の内容充実にお力を注いでおられることと思います。そんな各社のIR担当者にとって最も大きなテーマは、自社の企業価値を投資家にいかに伝えるかということではないでしょうか。その試行錯誤の中で、説明資料のページ数はどんどん増えていく傾向にあることでしょう。そうした何枚にもわたるIR資料の中で、特に一枚のスライドが、シンプルでありながら印象深く企業価値を表現していることがあります。そしてそのスライドの説得力は決して偶然ではないのです。
例えば、米国の元大統領のリンカーン。たとえ彼に会ったことはなくても、彼の崇高な思想は、「人民の、人民による、人民のための政治」のスローガンに凝縮され、今も人々の心に浸透しています。同じように、その企業を深く知らなくても、心に残る一枚のスライドは圧倒的な説得力をもって饒舌に企業の魅力を語ることがあるのです。
本賞は、「一枚であっても企業価値を効果的に伝えるIR資料のスライド」を表彰し、その好事例を共有することで、IR担当者の皆様に具体的なヒントを提供することを目的としています。
本賞の始まり
2010年代の初めのある日、佐藤明氏は考えました。彼は日本有数の経営コンサルティング・クリエイティブ制作会社である株式会社バリュークリエイトのパートナー。「IRの表彰制度はあるが企業の代表者が表彰されるものが多い。IRはトップの仕事だが、現場で苦労しているIR担当者にスポットをあて、彼らが作成する資料で良いものがあればそれを好事例として取り上げ、他社が参考にして全体のレベルアップになるような企画ができないものか」と。
そこで当時日本IR協議会の事務局長・首席研究員であった佐藤淑子氏(現・専務理事)に相談を持ちかけた結果、この二者により「IRグッドビジュアル賞実行委員会」が組織されて、当社が事務局を務めさせていただくことになりました。2013年のトライアル開催からスタートし、今回で4回目となりました。
第4回IRグッドビジュアル賞受賞企業と応募スライドのご紹介
ここで、2017年の受賞作品を紹介しますのでまずはご覧ください。
本賞の概要
ご覧の通り「IRグッドビジュアル賞」の審査対象は、決算説明会や個人投資家向けの説明会資料の1ページです。IR担当者が手掛ける多くの資料の中で、手作りの要素が強く、各担当者の工夫が直接活かされるものは、パワーポイントで作られる説明会資料でしょう。その何十ページにも及ぶスライドから、最も企業価値を伝える一枚、または最も苦労・工夫した一枚を自ら選んでご応募いただき、その一枚のスライドがいかに雄弁にその会社の価値を物語っているかが評価されます。審査対象は一枚のスライドだけですが、それを含む資料全ページをお送りいただきます。審査員は全ページを見て、応募スライドの位置付けを確認したうえで評価を始めます。
時期的には、毎年1月中旬過ぎからご応募を開始し、2月中旬過ぎまで受け付けます。ご応募の条件は特にございませんが、エントリーシートをもれなくご記入頂き、本賞に応募されたIR資料や審査コメント・個人投資家評価等を、「IRグッドビジュアル賞 好事例集」に掲載およびセミナー等で共有することに許諾いただけることが求められます。締め切り後、すぐに審査を開始し3月下旬に合同審査会を行って受賞作を決定します。4月初めに表彰式兼好事例紹介セミナーを当社にて開催します。受賞会社に対してはその席で審査員から直接講評を差し上げます。
惜しくも選に漏れた会社様も審査員によるコメントをお預かりしますので、事務局である当社が責任をもって全社ご訪問し、受賞作品の紹介とともにご説明させていただきます。これが冒頭にお話した「個別フィードバック」です。
審査員と審査のポイント
現在は下記の5名の方が審査にあたっておられます。皆さんIRに造詣が深く、元アナリスト、クリエイティブデザイナー等多彩な顔ぶれです。
佐藤 明氏(バリュークリエイト パートナー、元野村證券)
佐藤淑子氏(一般社団法人日本IR協議会 専務理事)
山岡三四郎氏(ヤマオカアンドカンパニー 代表取締役、元キャピタル他)
渡部京子氏(柴田レック 取締役、元キャピタル)
岡部哲也氏(バリュークリエイト クリエイティブ・ディレクター)
審査にあたっては、次の4点を中心に総合的に評価しコメントをいただきます。
①ビジュアルの質・完成度・・・情報量が適切か、フォント・色使い・グラフ・図表の取り扱いは適切か等
②メッセージ伝達力・・・ストーリーがあるか、経営の方針・戦略がよくあらわされているか等
③株主価値についての示唆・・・数値が効果的に盛込まれているか、主要指標と今後の業績の関係が明確か等
④新規性・チャレンジ性・・・新鮮さ・斬新さがあるか、継続応募先については前回より進化しているか等
グッドビジュアル賞といっても、もちろん「単に見た目の良いスライドを選ぶ企画」ではありません。伝えたいメッセージをわかり易く的確に伝えるために効果的にビジュアルを使用しているかどうかを見るものです。
なお、上記の4項目につき、審査員には5段階評価で点数もつけていただいていますが、あくまでも全応募会社の中でご自分の会社がどのレベルにいるのかの目安としてのみ使っていただくものです。得点の高い順での受賞ではありません。受賞作は審査会で各審査員が熱い議論を戦わせて決めていただいております。
ここまでお読みくださった皆様に、「評価される説明資料のヒント」を簡単にご紹介しましょう。
・捨てる、伸ばす(長期にする)、較べる、鳥の目・虫の目、経営を語る、見える化 ⇒「シンプルにする」「文脈を作る」「企業価値を語る」(佐藤明氏作成 好事例紹介セミナー資料より)
どのようなスライドが投資家に刺さるのか、他社の受賞事例をご覧いただきながら上記の佐藤明氏のポイントをご参考にしていただければと思います。
心配は杞憂であった
現在は事務局を仰せつかっている当社ですが、実はこの企画を走らせる際に、いくつかの心配な点がありました。
ご応募の会社に結果報告のため訪問するにあたり、選に漏れたといえ評価の高い企業の場合は心配ないとしても、評価の低い会社の場合はいかがなものか。「1ページだけ見て何がわかる」とか、「当社を知らない外部の人にとやかく言われたくない」とか担当の方が怒り出すのではないか・・・。怒り出さないまでも押し黙ってしまって気まずい雰囲気になるのではないか・・・。
しかしそれらは全て杞憂に終わりました。フィードバックに伺った会社のご担当者は、どのような評価であっても真摯に、熱心に聞いてくださいました。考えてみれば当然のことです。この企画は、主旨をご理解いただいた会社だけが、普段なかなか聞くことのできない第三者の見解を聞きたいと自発的にご応募されるもの。しかもそのような意識の高い会社は、「良薬は口に苦し、忠言は耳に痛し」と、厳しいご意見こそ大事と真剣に向き合ってくださいます。私は、事務局として、これまでに二百社近い企業をフィードバックで回らせていただきましたが、皆さん真摯にお聞きくださっております。「大変参考になりました」との声をお聞きすると、事務局としても大変やりがいがあります。
最後に
ご参考に過去の受賞企業の一覧を掲載し、また、直近第4回の受賞会社で現在、ホームページで受賞作品をご紹介しておられる企業のURLを掲載させていただきます。
来年もIRグッドビジュアル賞の企画は続きます。賞の性格上、あまり大々的に告知しませんので、日本IR協議会および株式会社バリュークリエイトのホームページを注意してご覧いただければと存じます。
皆様のご参加を事務局として心よりお待ちしております。
第1回(2014年) |
第2回(2015年) |
第3回(2016年) |
第4回(2017年) |
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JSR(株) |
いちごグループホールディングス(株) |
(株)サイバーエージェント |
いちご(株)② |
エーザイ(株) |
ケネディクス(株) |
(株)LIXILグループ |
(株)ポーラ・オルビスホールディングス |
(株)オリエンタルランド |
(株)資生堂 |
(株)荏原製作所 |
シスメックス(株) |
日進工具(株) |
古河機械金属(株) |
トッパン・フォームズ(株)② |
伊藤忠商事(株) |
ユニオンツール(株) |
セイコーエプソン(株) |
(株)乃村工藝社 |
(株)みずほフィナンシャルグループ② |
(株)堀場製作所 |
トッパン・フォームズ(株) |
(株)船井総研ホールディングス |
(株)福岡リアルティ |
丸紅(株) |
(株)みずほフィナンシャルグループ |
(株)ナック |
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ANAホールディングス(株) |
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第4回受賞会社ニュースリリース
いちご株式会社
http://www.ichigo.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2017/04/Ichigo_20170411_IR_Good_Visual_Award_JPN.pdf
ポーラ・オルビスホールディングス株式会社
http://www.po-holdings.co.jp/news/pdf/20170417.pdf
伊藤忠商事株式会社
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2017/170413.html
株式会社福岡リアルティ
http://www.fukuoka-reit.jp/reit_apps/whatsnews/detail_ja/147