「企業研究会IR実践フォーラム」にアドバイザーとして参加して

2016年3月9日

執行役員 IR事業部長

伊藤 直司

企業研究会の成り立ち

プロネクサスは、一般社団法人企業研究会の設立趣旨と運営目的に賛同し、法人会員となっています。
企業研究会とは、1948年(昭和23年)、日本の産業・経済の復興に貢献することをめざした民間企業の経営幹部有志の自主的勉強会からスタートし、日本の産業界の成長・発展と共に歩んできた団体です。戦後の復興とともに企業の経営・管理の諸制度をどのように立て直していくかについて意見を交換し、共同して研究、その成果を他の企業に反映させ、産業界全体のマネジメントのレベルアップに寄与してきました。

当社は、同会の目的である、「企業等の経営者・管理者が主体となり学識経験者の協力を得て、産業・社会の発展に有用な人材の育成を図り、経営と管理に関する課題を相互に研究、調査し、もって各企業等の実践的な要請にこたえるとともに、その成果を広く普及・提言することにより、国際社会とわが国産業経済の発展に寄与する」(同会定款第3条より)という趣旨に賛同し、法人会員として入会しています。

IR実践フォーラムとは

同会では、異業種企業による約40の研究交流会が活発に運営され、延べ1400社の若手からベテランまで多彩な人材が経営の実践視点から情報交換し学び合い、同時に懇親を深め人脈を築いています。

筆者はこの研究交流会の一つである「IR実践フォーラム」という勉強会に、基礎コースのアドバイザーという形で参加しています。IR実践フォーラムは、IR の実務に役立つ「実践的かつホンネの情報交換」ができる会合をめざして、2006 年に発足しました。

今年で第11期になりますが、筆者は前職の時代にこの勉強会の設立に携わった発起人の一人であり、第1期から参加している数少ないメンバーの一人となりました。

IR担当者の現場の悩み、事例が聞ける、役に立つ「ヨコのつながり」

毎月開催される例会では、注目企業のIR責任者をお招きして、事例紹介を主とした講演(プレゼン)とそれを受けてのグループディスカッションを行なっています。
単に「偉い人の講演を聞いて帰る」だけのセミナーでなく、プレゼンを聞いたあとで参加者同士話し合うことにより、他の会社の経験や事例を自社の改善につなげていくことができるのが特徴です。

発足以来、「他社の成功・失敗事例が共有できる」、「社内で聞けない悩みが解決した」と好評を博しています。
IR担当者は社内では孤独。誰にも相談できない、とよく聞きます。
筆者も以前は企業でIRを担当していたので共感できますが、日々のIR 活動の中で様々な課題や疑問に直面した時、他社との「ヨコのつながり」が必ず役に立つと思います。

証券アナリストとの対話:重視する指標は?

以上のようにこの会では、基本的に会員同士の情報交換が主ですが、時には外部講師として、新進気鋭のコンサルタントや、日頃業績取材等で対応している証券アナリストの方々をお招きしてお話を聞くこともあります。
タイミングの良いことに、この2月の例会がちょうど「アナリストとの対話」というテーマで現役のアナリストの方々に来ていただいた会でしたので、今回はそのお話をしてみたいと思います。

当日は、ご出席のアナリスト3名とモデレーターによるパネルディスカッションをまず行ないました。パネリストを務めたアナリストには、「プレビュー取材の是非」と言う具体的な質問から始まり、IR担当者の本音の問いかけが寄せられ、アナリストとしての視点から、それぞれに回答がなされました。

「アナリストとして企業を評価する際、重視されている点、指標などはどのようなものがありますか?」という質問には、「一つの指標に偏るのではなく複数の視点で企業を立体的に捉えることが大事だ」と、基本的な考え方を教えていただきました。しかしこれだけで終わらないのが「実践」フォーラムのいいところ。その「複数の視点」についても具体的に教えていただけました。そしてそれは、「成長性」や「収益性」のような、ごく一般的な財務的な分析項目、あるいは「業績」と「バリュエーション」というような観点からのものばかりではありませんでした。

「経営者の姿勢」「経営陣の信頼度」といったマネジメントに対する評価、そして「情報公開の正確性や一貫性」、「IRコミュニケーションの質」などIR担当者の資質に関するものまで広範囲なものでした。
自分たちの対応の仕方までが評価の指標となると聞いて、出席のIR担当者の皆さんは責任を痛感するとともに大きなやりがいを感じたことと思われます。

悪い話も、リスクも語ることが長期的な評価に有効

「IR担当者としてのNGワードや、やってはいけないこと、してほしくないことは?」という問いかけには、「IRとして企業をよく見せたいのは理解できるし、それも一定の範囲であればIRの役割の一つだと思う。しかし、悪い話は悪い話として、また、リスクはリスクとして正しくご説明いただくことが長期的に評価をディスカウントされないことにつながる」とのご回答が。IR担当者の立場を理解していただいたうえでの提言に頭が下がりました。

さらに、「我々日本企業のIR担当者にとって足りないところ、こうすればもっとよくなる、というアドバイスは?」といったきわめて身近で実践的な質問に対しては、「こういう投資家に投資をしてもらい、これくらいの評価を得られるようになるには自社はどのような情報を開示するべきか、という視点でディスクロージャーに取り組んでみてはいかがでしょうか?」といった示唆が。

アナリストとの対話をグループで実践。IRの課題認識に有益な機会

パネルディスカッション終了後は、当日出席の約60名のIR担当者が8つのグループに分かれて、パネルのテーマである「アナリストとの対話」をベースとしてディスカッションをしました。

その際、パネルに参加したアナリストの面々には、順番に各グループのディスカッションの輪の中に入っていただきました。これもこの会の特色。出席者はパネルを聞くだけでなく、実際に登壇者と「対話」ができるのです。

後日行なったフィードバックアンケートでは、参加のアナリストの方々からは「IR担当者とこのようにお話をしたことはなかったので貴重な経験となった」「IRの関心事がわかった」との感想をいただき、IR担当者の皆さんからは、「アナリストさんの生の声を聞けたことで今後のIRの有り方やコミュニケーションの仕方について考える良いきっかけになりました」「アナリストの皆さんのご意見を率直に聞くことができ、本当に感謝しております」「数字の背景を語れるIR担当者は印象がよいというコメントがありましたが、自身がIR担当者として成長するために、事業を幅広く、かつある程度深く勉強をしなければならないと課題認識が強まりました」という声が寄せられました。

今後もこのコーナーでは、このIR実践フォーラムの活動の様子をご紹介していきたいと思います。
(この文章作成には、一般社団法人企業研究会のWebサイトを参考にさせていただきました)

ナレッジ一覧に戻る