代表取締役社長 上野 剛史
社長は13年前(1997年)に入社した当時、どのような課題に取り組みましたか?
入社した13年前というのは、IT化が急速に進展し、米国でSEC(証券取引委員会)が運営する電子開示システムのEDGAR*が義務付けられた頃で、この電子化の波は日本に必ず来るだろうと予想されていました。これに対応していかなければ当社のビジネスの次はないということで、「電子開示推進プロジェクト」を発足させました。これが電子開示に向けた取り組みの第一歩で、私がその責任者として任命され、電子開示制度に向けた新しい体制づくりやサービスの検討を始めたのです。EDGARの日本版ともいえるEDINETが開始されたのが2001年ですから、当社はその4年前から準備していたことになります。EDINETに関する書籍の発行やセミナーなどお客様への情報提供に加えて、EDINETに対応した独自のシステム開発をいち早く進めました。そして2年後の2003年、現「プロネクサス ワークス」の前身ともいえる「エディッツ・サービス」を他社に先駆けて販売開始しました。私自身も「エディッツ・サービス」のセールスをパソコンを用いて行いましたが、お客様の反応が非常に良かったことを記憶しています。「この商品はお客様のニーズに合致している」と確信しました。1年後には、このサービスをご利用くださるお客様が1,000社を突破しました。
*米国証券取引委員会が運営する、法定開示書類の電子開示システム
電子開示サービス提供のためには社内体制づくりも重要な課題だと思いますが、これは順調に進んだのですか?
体制として新たな組織をつくることに加えて、社員の意識を変えていくことも重要だと痛感しました。当社も歴史のある企業ですが、どんな企業にとっても歴史があるということは、良いことだけではありません。前例にとらわれて、新しい商品やサービスの販売になかなか馬力がかからないことがありました。そんな時は、自分が動けばついてきてくれるのではないかと思い、とにかく自ら多くのお客様を訪問しました。入社後間もない自分としては、過去の営業経験やしがらみがなかったからできたのかもしれません。
また、電子開示の体制づくりということでは、会長のリーダーシップが大きかったと思います。EDINETの開始時点で、当社は生産体制のデジタル化が完了していましたし、社内システムのインフラづくりもスピーディーでした。会社のしくみや体制を変えながら、トップが「顧客第一主義」と「変化への対応」を合言葉に陣頭指揮したことで、社員も危機感を持ち意識も変わってきたように思います。
社長は、子会社イーオーエルの社長も兼務しています。イーオーエルは、当社グループにとってどのような企業でしょうか。その強みは何ですか?(イーオーエルは、2010年10月1日付でプロネクサスに吸収合併されました。これは、それ以前のインタビューです。)

2001年は、EDINETが開始された年で、企業の開示データのデジタル化が進み、データの比較分析などの環境が徐々に整ってきていました。このデジタル化の大きな流れの中で、ディスクロージャーの分野に近いビジネスとして何かできることはないかと考え、データベースサービスという領域に着目したのです。最初のデータベースは、機能面等で足りないところが多々あり、お客様からも受け入れてもらえず苦労しましたが、セールスの過程でお客様から色々な示唆を頂き、改良を重ねて今のようなサービスになりました。おかげさまで、現在、企業財務情報データベースのスタンダードとして、金融機関やシンクタンクだけでなく、全国110の大学で使用されています。あわせて、「e-IRサービス」という、財務数値などの開示情報をグラフを駆使した見やすいIR情報に自動的に加工、更新するサービスも始め、これもお客様の業務負荷を軽減できるということで好評を得ました。イーオーエルの事業は、ディスクロージャーの分野におけるデータの配信、加工分析のサービスとして、本業を補完する非常に重要な位置にあると思います。データベースについては、この5月に、国内企業だけでなく、アジア全体の企業を対象にした「Asia One」というサービスもプレリリースしました。データベースサービスを提供している企業は他にも多数ありますが、プロネクサスのグループ企業としての認知度やセキュリティー体制などの信頼性がイーオーエルの強みであると考えています。
当社が直面している現在の事業環境をどのように認識していますか?
私が入社してからこれまでの間、日本における法制度は激変しました。2000年の連結開示に始まり、EDINET、会社法や金融商品取引法の制定、四半期報告制度、XBRLの導入、そして株券の電子化と、開示制度におけるグローバル化、デジタル化が急速に進みました。こうした社会や制度の変化は当社にとってはビジネスチャンスでもありリスクでもあったわけですが、この間、当社はまさに環境変化に素早く対応することで成長してきたといえます。
しかしながら、現在の日本の経済動向をみますと、資本市場の成長は、なかなか厳しいものがあります。開示制度の改定も一巡しました。当社ビジネスの基盤である上場企業数自体も減少し、また、企業側も業績低迷を背景にコスト削減努力をしていますから、価格に対する要求もシビアになっています。そういう意味では、当社にとって非常に厳しい事業環境であることは間違いありません。かつては、外部環境の変化を成長ドライバーにできた時代でした。しかし、今後は、単に「変化への対応」というドライバーだけでは当社は決して成長できない。より能動的に市場を開拓していくこと、つまり新たな成長ドライバーの創出が重要だと考えています。
今後の成長ドライバーを考えた時、当社にとっての重要なファクターは何でしょうか?
ディスクロージャービジネスにおける当社の強みは、システム開発力でありコンサルティング力で、今後もこの分野に経営資源を投入していくことに変わりはありません。また、当社は、お客様によってはIPO前からお手伝いをさせていただき、お客様のご要望に迅速・確実に対応し、長年のお取引を通じてお客様の信頼を獲得してきた企業です。これは当社の大きな財産であり、何ものにも代えがたいものです。こうしたお客様との信頼関係をより高めながら、新たなニーズに対応していくには、単に従来の延長線上でのシステムのバージョンアップや、コンサルティングの提供では非常に難しいと考えています。例えば、システムとコンサルティング、デジタルとアナログというものをうまく組み合わせて一体のサービスとして提供することや、システムとコンサルティングの対象分野をディスクロージャー分野以外の会計分野や企業戦略の分野へと広げていくことも可能です。また、我々のディスクロージャービジネスというのは、言語と法律の問題があるので、そのまま海外にもっていくことはできにくいのですが、システムやデータベースなどは、独自の強みを活かしたグローバルな市場展開も可能だと思います。「Asia One」はその好例ですね。
当社グループの100周年に向けて、中長期的な展望を聞かせてください。
昨今のトレンドをみても、今後10年間でデジタル化は我々の予想以上に急速に進むのではないでしょうか。それが、当社のビジネスにも大きく影響してくることは必至です。
直近の課題は、当社ビジネスの柱である「プロネクサス ワークス」の機能拡張がポイントです。IRや投信・REIT分野へのサービスのラインアップ拡大やシステム拡充でシェアアップを図ること、またコンサルティングの分野では、当社が今持っているノウハウを新サービスとして提供していくことなどを考えています。そして、中期的には2015年に導入されるIFRSへの対応。これを大きなビジネスチャンスと捉え、システムとコンサルティングの両面からきちんと取り組んでいきます。IFRSについては、EDINETとも連動してきますから、当社のシステム力が活かせる領域ですし、コンサルティングでは、IFRS対応の有料セミナー開催やガイドブックの発行など、すでに具体的な取り組みを開始しています。
より長期的な展望としては、80年前に当社の創業者が“いずれは亜細亜に進出したい”ということで「亜細亜商会」を設立しましたが、その意思を実現したいと考えています。そのためには、デジタル化やグローバル化の波を的確に捉え、先ほどお伝えした当社の強みを活かした事業戦略を着実に推進していきます。環境の変化に対応することで築いてきた80年の実績を礎に、当社にとって「変えること」と「変えないこと」を見極めながら新たな課題に挑戦し、新しい商品やサービスを提供してまいります。
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